
この企画は、芸人の九月と、彫刻家/文筆家のコニシムツキによるラジオ番組です。
辞書を引いて出てきた単語をこねくり回して面白がる。ただそれだけの時間を過ごします。
Podcastでも、ブログ記事としても好きな形で。
コニシ:はい、というわけで今回もやっていきましょう、広義苑でございます。さっそく広辞苑をパラパラとしていきます。ストップお願いします。
九月:はい、ストップ。
コニシ:ホイ。……「メニスカス」。
九月:メニスカス?メニスカスは、カタカナ?
コニシ:カタカナですね。
九月:何それ?
コニシ:えー、「細管内の液体の中央部が、管壁に沿う部分に比べて盛り上がったり、または下がったりしてできる曲面。毛細管現象によって起こる」。
九月:何学の言葉かもわからなかったぞ。
コニシ:めちゃくちゃ専門用語ですね、これ。
九月:めちゃくちゃ専門だね。毛細血管……生物系ってことなのかな。
コニシ:そうなんですかね。医療とかかな。
九月:生物とかかな。「細管内」……。血管のデコボコ?
コニシ:液体の中央部が、「管壁(かんぺき)」に沿う……。
九月:管壁って何なの?
コニシ:あの、管(くだ)の壁ですね。
九月:管の壁。あー、はー、はー。に沿う部分に比べて盛り上がったり、盛り下がったりしてできる曲面。本当に聞いたことないし、読んでもピンとこない。でもあれか、生物っていうよりは、あれか。毛細管現象とかの……物理か。
コニシ:そうですね。
九月:物理っぽいな。あー、じゃあ俺、1個もわかんないわ。俺その、ボールが転がるのですらギリギリだったから。
コニシ:確かに。ちなみにこの両隣、右隣には「メニエール病」、左隣には「メニュー」。
九月:じゃあもう全部カタカナのゾーンね(笑)。「メ」から始まる日本語ないからな。で、まだ聞き覚えのある言葉が2つある中で、「メニスカス」。
コニシ:一番知らないやつを引いてしまった。
九月:知らないなあ。メニエール病はあれだよね、本田圭佑もなってた、ちょっと運動がしんどくなっちゃうみたいなあれだ。なんか結構、女性がなるんじゃなかったかな。10代とかで発症して、運動部のマネージャーとかやる人が結構多いみたいなイメージある。
コニシ:へー、そうなんだ。
九月:息切れしやすくなるとかだから、プレイヤーできなくてマネージャーになる、みたいな。めまい、耳鳴りとかね。そっち系だよね。メニエール病のほうがちょっと馴染みあるな、だったら。で、メニューなんて、もっと馴染みある(笑)。メニューなんて毎日見てるんだから。
コニシ:そんな中ですよ、メニスカス。何語なんだろう。
九月:マジ何語なんだろう。英語っぽくないけどな。スペルが浮かばないもん。ちょっと調べよう、何語かぐらいは。メニスカス、何語……ギリシャ語!
コニシ:へー! じゃあそんなに昔から。
九月:昔だね、じゃあ多分。でもさ、ギリシャ語だから昔って思うの良くないかも。今のギリシャも何かはやってるから。今お昼寝してるだけじゃないから(笑)。イメージあるけどね、ギリシャ、シエスタ的な文化とか。えー、でも何なんだろうね。
コニシ:液体が……あー、あー! 表面張力!
九月:あー! 全然馴染みあるじゃん。あれか、ほら、体温計とかで、水銀タイプのやつとかで、端っこは36度示してるけど、真ん中へこんでて、「真横から見なさいよ」っていう。5.5にも見えるけど、みたいな。あのやつだ。
コニシ:はいはい、その、あれだ。でも確かに言われてこの説明文を読むと、普通に表面張力の話ですね。この壁、壁面のところで、水がちょっとこう盛り上がってたりとか、こう膨れ上がったり、みたいなことっぽいですね。
九月:だからあれだ、メスシリンダーの見方がどうこうみたいな。
コニシ:あー。
九月:えー、ちょっと残念な話があります。調べたところなんですが、この「メニスカス」で調べるとですね、「小学校6年 理科」と。
コニシ:悲しいよ! 俺たちは何なんだ、じゃあ。
九月:小6理科って、教科書載ってた?
コニシ:でも表面張力で習ったような気がするから。
九月:するか。あ、でも、もしかしたらあれか。教科書に載ってないけど、指導者向けにはメニスカスっていう言葉が使われてる、ぐらいの感じか。
コニシ:専門的な現象の名前で言うなら。だからもしかしたら、教科書の青枠のちっちゃい字の豆知識的なところで、「メニスカス現象と呼んだりするよ」みたいな。
九月:コラムみたいなな、面白いところね。うわー、俺あそこ社会しか読んでない(笑)。社会は読んだぞ、俺あれ。細かい欄。楽しいから読んだけど。そうか、理科の細かいところ……だからあれか、小学校の理科で資料集の青枠で、高校の多分物理化学とかだと載ってんじゃない? だんだん。で、大学で理学部のやつはみんな知ってる、みたいな。その感じだな、多分これ、難易度的に。
コニシ:なるほど。
九月:だからその、なんていうの、恥ずかしくないぞ(笑)。一旦。だって表面張力がわかるんだもん、俺たちは。現象は知ってる。そのメニスカスは知らないけど、言葉知らないだけで、見たらわかるもん。あるもん、そういうこと。へこんだり膨らんだりみたいな。知ってる知ってる、見たことある。
コニシ:ギリシャ語でこれは「三日月」を意味する。
九月:三日月! あー、だから、上手な表現ね。
コニシ:お洒落な名前の付け方ですね。
九月:やっぱりそれはもう何千年も前から文化あるエリアですよ、ギリシャなんて。水面がちょっとこう打ってるから、これを三日月と名付ける。すごいね。「水」と「月」で引っ掛けるのもお洒落だしね。どっちもなんか花鳥風月的な……ごめん、花鳥風月、水入ってないわ(笑)。入ってるかなと思って言っちゃったけど。
コニシ:意外といない(笑)。
九月:あ、そっか、花鳥風月、水いないんだ。なんか俺、いるイメージで言っちゃったな。風水とは言うけど。そっか、花鳥風月に水はいないんだ。じゃあ日本文化が負けてるな、その、ギリシャは水入れてるけど。
コニシ:いい名前だなあ。逆にその、レンズも、その片面凸、片面凹のレンズは「メニスカスレンズ」って言うらしいですね。
九月:あ、だからあれか、カメラ業界とか、コンタクトレンズもそしたらメニスカスレンズになるのか、形状的には。ぷっくりしてるからね。ちょっと光学系でも使われてるかもしれない。というかそうか、完全にその技術屋さんもじゃあ詳しいだろうね。「カメラのキタムラ」のスタッフさんとか、「メニスカスのほうですか? 平らなほうですか?」とか言ってんじゃない(笑)。「三日月か満月か」って。言いそうな気するけどな。
コニシ:凸レンズとか言うよりメニスカスレンズって言ったほうがかっこいいですもんね。かっこいい。あ、そっか、だからギリシャ語ルーツなのもそういうこともあるのかもね。かっこいいから残ったんじゃない、言葉として。
九月:表面張力とか言うよりも、やっぱメニスカスって言いたい。「表面が張る力」。まあわかりやすいんだけど、わかりやすいんだけどさ、わかりやすいだけでしょ、っていうところがあるじゃない。に比べるとメニスカスレンズの趣き。趣きで流行った言葉か。
コニシ:三日月だし。ルーツも音の響きもかっこいいって、生き残りますよね。いい言葉だよ、メニスカスレンズ。
九月:例えば、カメラを買ったとして、レンズ交換する時に、店員さんに「すんません、俺メニスカスレンズなんすよ。新しいメニスカス欲しくて。前使ってたメニスカスレンズがちょっと割れちゃったんすよ。今どんなメニスカスレンズ流行ってるんですか?」って(笑)。
コニシ:通じなかった時の赤っ恥!
九月:一番恥ずかしいな。「あんま現場で使う言葉じゃないんですよ」って言われたら嫌だしね。そういう時、その店員さんが知らないほうがマシだもんね。「知らない、何そのメニスカスレンズって、あのデコボコの」って言ったら、「あ、凸レンズなら……」になるけど、仮に詳しい人だったら一番恥ずかしくない? 「あーはいはい。あんまこういう時言うやつじゃないっすよ。」
コニシ:「言いたかったんだな」っていうのまでバレるやつ。それ嫌だな。
九月:でもさ、用語知ってるって基本お洒落じゃん。やっぱりそれは、知ってるに越したことはないかなって。俺これから言うよ。絶対言う、メニスカスレンズ。これを機に言ってたほうがいい。俺さ、食べ物とか食べた時とかにも、それっぽい言葉言いたいのよ、感想で。
コニシ:あー、でも確かに、ワインとか。あーいうのに「ナッツ系の香りが」とか。わかんねえけど、しょっちゅう出てくる。
九月:コーヒーでさ、「まるでチョコレートのような」ってすごい言うけど。「ドライフルーツのような華やかな香りが」とかね。違うじゃん、生き物。豆、豆だから違うからって思うけど、言いたいもんね、そういうの。
コニシ:華やか系だな、まではわかるけど、これが果たしてドライフルーツのようかと言われたら、いまいちピンときてないまま。
九月:ドライフルーツもさ、何を乾かしたかによるしな、そもそも。リンゴなのかイチジクなのか、全然違うよ。っていう時にね、それこそ野暮と思えばだけど、コーヒー豆も乾かせるもんね(笑)。そしたら同じになるに決まってるもん。感想で精度高いこと言いたいみたいなのはあるかも、俺。エスニック料理とか食べたら、一旦「クミンの匂い」って言うもん。入ってるかわかんないけど。「ちゃんとインストールできてますよ」って、言葉知ってるよって、俺「クミンが」「八角が」って言う俺(笑)。
コニシ:見つけられるよって。
九月:何回かに1回当たるからね(笑)。そういうなんかさ、今「言語化」がどうこうの時代じゃない。色々、三宅香帆さんとかも本書いて売れて、っていう時にさ、言語化って言うけど、所詮さ、難しいじゃん。簡単な単語で真理を言い表すの一番かっこいいよ。みんなが知ってる言葉で知らないこと言うのが一番かっこいいけど、残念ながら俺は谷川俊太郎じゃないんだ。っていう時に、俺はそれっぽい専門用語1個言うしかできない(笑)。「メニスカス」「クミン」。これでやっていくんだ、俺は。その1本のデッカい武器で。メニスカス!クミン!ペンタトニックスケール!このギターソロ、ペンタトニックスケールだ!
コニシ:わかってるっぽい言葉を1個、デカい大剣として背負って。
九月:そうそう、言うしかないんだ、1個で。1個で言うんだよ、俺は。
コニシ:本当は合気道で勝ちたい。
九月:無理だから、正拳突きしかできない。で、それ全ジャンルに言えることでさ。やっぱり野球好きのおじいちゃんとかで、自分はプレー経験なくて、そんなに用語わかんない人って、マジですぐ「ジャイロ回転」って言うのよ(笑)。「ジャイロ回転だからどう」とか。
コニシ:どの分野にもその「ジャイロポジション」ありそうですね。
九月:あるんだよ、そうなんだよ。そういう「知ってる風」が出せる言葉ってあるじゃん。メニスカス、カメラ業界でそれかもね、もしかしたら。
コニシ:曲の聴き方とかで言うと、「変拍子」とか「転調」とか。「ここの転調が気持ちいいんだよな」とか。そういう、ちょっとわかってる感出せそうなやつとかはありますね。
九月:「落ちサビ」とかね。落ちサビ、マジ言いたい。そういうのあるよな。あとさ、野球で面白いのは、「ジャイロ回転」って言葉をいつの時代も使うのよ。で、ルーツは多分、『MAJOR』って漫画あったじゃん。あの『MAJOR』の中で「ジャイロボール」って言葉が出てきて、それで流行ったらしいのよ。
コニシ:あ、そうなんだ!
九月:だから、「ジャイロ回転」って言って偉ぶってるおじさんたち、みんな『MAJOR』読んでただけなのよ。何の知識も、文献『MAJOR』なの、実は。
コニシ:意外にも! 全部に出典『MAJOR』って書いてるんだ(笑)。「ジャイロ回転、出典『MAJOR』」。
九月:で、なんかジャイロ回転するとボールが速く見えるらしい、みたいな俗説が2000年代にあったのよ。で、「あのピッチャーはジャイロ回転だから球が速い」とかみんな言うようになったし、ゲーム、パワプロとかの野球ゲームでもジャイロ回転っていう特殊能力ついたらボール速く見える、みたいなあったんだけど。これが2006年だったかな、あの日本の松坂大輔がメジャーリーグに行った時に、松坂は日本で「あいつはジャイロボールを投げる」ってずっと言われてて、メジャーに行った時にそういう触れ込みで紹介されたのよ、「ジャイロボーラー」って。でもアメリカ、本場のほうではその言葉がないから、知られてないから。
コニシ:『MAJOR』が海渡ってなかったら。
九月:そうなんだよ。『MAJOR』ってメジャーにないから。皮肉にも(笑)。で、ジャイロボーラーらしい、ってなって。で、色々アメリカで有識者とかが出てきて、「何のことがわからない、ジャイロボール」って。で、色々調べて解析した結果、実際松坂大輔はジャイロ回転のボールを投げてたのよ。ただ、速いストレートとかじゃなくて、ジャイロ回転っていうのは「落ちるスライダー」のことだったのよ。誰も思ってない(笑)。響きだけでジャイロって速い気するけど、落ちるスライダーのことだったんだって。
コニシ:みんな雰囲気で使ってたんだ(笑)。
九月:漫画の『MAJOR』ではジャイロボールって浮き上がる球として描写されてるけど、逆だったのよ、ストンと落ちるスライダーで。で、今度はさ、それが知れ渡ると、逆に「あのピッチャーのスライダーはジャイロだ」みたいな。何としてでもジャイロを活かしたい、吸い付きたい奴が(笑)。
コニシ:言葉として。
九月:そうそう、そういう風になった、みたいな。変遷があるよね、そういう言葉も。
コニシ:逆にそのテクニックのあれで言うと、最近Twitterとかでも結構人気の、長谷川あかりさんっていう料理研究家の方がいて。あの方、インタービューで、あの人のレシピってすっごいシンプルなんですよ、調味料少なくて。ですごい美味しい、みたいな。あれで、「やっぱり塩とかお酒とかすごい少ない量で、シンプルなレシピ作り心がけているのは、健康のためとかやっぱりそういう意識もあるんですか?」っていう質問に対して、「あ、いや、もうそういうのを少ないほうがかっこいいかなと思って」って(笑)。
九月:めっちゃいい!めっちゃいいな!
コニシ:「そのほうがかっこよくないですか?」って答えてて。言っていいじゃないですか。別に「毎日食べるものなんで、やっぱちょっと塩分とか摂りすぎないようには心がけてます」って。「あー、なんて食べる人にも気を使って、そこまで行き届いたメニューなんだ」ってなったほうが絶対料理研究家としては親切な筋通ってる感じするし、言いやすいのに、「かっこよくないですか?」って言えるのがかっこいいなって。
九月:めちゃくちゃいいな。めちゃくちゃいいな。そのスタンスが一番かっこいい。かっこつけるために専門用語とか足したがるところが俺はあるけど、本当にかっこいい人そんなことしないもんね。やっぱその一個先のかっこよさ、あるよな。
コニシ:土井善晴も「おかず1個でいい」って言ってるもんね。引き算系だよね、あの人も。やっぱ引き算になっていくんだ、最後は。
九月:そうだよな。だから行くところまで行った人は、レンズの種類とかも気にしないんじゃない? 別に。
コニシ:結局、弘法筆を選ばず的な話で戻ってくるのか。
九月:メニスカスレンズでも何でもさ、カメラっていうのはあればいいんだよ、みたいな。
コニシ:写りゃいいんだよ、みたいな。確かに、もうなんか歯がガタガタの喫煙所のおじいさんとか、「煙出りゃ何でもいい」つって「わかば」吸ってたり。あれもその一つだったのか。
九月:そのイメージあるな。でも俺、「煙何でもいい」って言ってるおじさんには疑いがあって。あいつら「煙何でもいい」って言って「わかば」行くじゃないですか。タバコではあるんですよ(笑)。煙何でもいいっつっても、ダクトとか行かないんですよ。焼肉屋のダクトじゃダメなんですよ、あいつら。お香のほうが安いとかまでは行かない。線香とかじゃない、排気ガスとか。だからタバコのルール守ってんだよ、あいつら。意外と超えていかない。
コニシ:あ、あれはじゃあカマシ?
九月:カマシカマシ。「破天荒ぶってわかば吸ってるけど、コンビニで売ってんぜ」っていう。めちゃくちゃルーツのちゃんとしたものだから。っていう時に、「煙出れば何でも」って言いながら、手でちまちま何か分かんないの巻いてるやつは一番怖い。行けるやつなのか、俺わかんない、それ。
コニシ:ヨモギとかまで行ってるかもしれない。
九月:吸えばなんか出るかもしれないからね、ヨモギでも(笑)。
コニシ:そうね。谷川俊太郎、長谷川あかりが「合気道」だとしたら、を目指そうとしてやると、そのわかばおじさんになるというか、やっぱ行き着くものであって、目指すものではない、みたいな。そういう難しさはきっとありますよね。
九月:結局だから身の丈にあったというかさ、言葉を使いながら身の丈をデカくしていくのが一番いいんだろうな。ちょっとずつ背伸びして、そこに追いつきながら。本当に0.5ミリの背伸びを繰り返して、気づいたらデカくなってるがいいんだろうね、言葉って。俺はだから、やっぱごめん、使わないわ、もう。メニスカス。ハズいわ。
コニシ:まあでも、同時に使わないと覚えないみたいなのもあるじゃない。子供の頃に、「クオリティ」って言葉を知って、なんかかっこいいし、それこそ「わかってるっぽい」言葉。やっぱ使いたいけど、やっぱ子供ってそういうちょっと子供っぽくない言葉選びをした時に、「最近覚えた言葉だろう」とか、「使いたかったんだな」みたいな感じで揚げ足取られるじゃないですか。
九月:あるね。
コニシ:で、やっぱり恥ずかしいし、使わないとこうなっちゃったりするけど、やっぱそれを繰り返していくことでしか言葉を使いこなせないんですよね。
九月:そうだよ。思い出した、それで俺。俺、基本的に自分の親に対しては感謝してるんだが、それ一個聞いて思い出したんだけど。俺の母親、ちっちゃい頃よく「なんであなたは本で読んだこととか人から聞いたことを、自分が気づいたみたいに言うの?」って(笑)。「それ一番嫌なんだけど」って繰り返し言われ続けてて。あの瞬間だけ「毒親」です。子供なんてそれでいいんだから(笑)。それを繰り返して言葉を広げるしかないんだから。自分が気づいたみたいに言ったほうがいいんだから。あ、なんか話の流れで自分の親が毒親って気づいた
コニシ:一部だけね。そのしつけだけ間違ってるって(笑)。ちょっと有毒成分あった。
九月:俺がめげずに「自分で気づいたみたいに」言い続けたからよかったけど。それによってもっと詳しい人に「それ違うよ」って言われたりとかして学んでいくわけですよ。背伸びしていく。大事だよ。あ、あと、もう一個思い出した。うちの母親、なんかそのそれこそ空想的な話とか、小説とか漫画の話すると、「ない話しないで」って言うの(笑)。毒親これ!ない話ばっかりなんだから、世の中。文化、文化なんて。今、俺「ない話」をすることと「知ってる風」に喋ることで飯食ってる。
コニシ:反動で(笑)。
九月:じゃあ、ありがたいのかもしれない。反動なら。大事だった可能性ある。ゲーム禁止だった家の子供がゲームクリエイターになるみたいに。そっか、「薬親」だったんだ、あれ。毒親じゃなくて。毒をもって薬となすみたいな。トリカブトがたまに薬になるみたいなやつだ。
コニシ:抗体つけられてたんだ。
九月:抗体か、そういうことか。ワクチンの仕組みだったのね。ワクチンかあちゃんだったんだ(笑)。知らなかったな、ワクチンかあちゃんか、あれ。
コニシ:フライングVワクチンかあちゃんだった。
九月:ワクチンかあちゃんなんだ、俺の親。嫌だな、ワクチンかあちゃん気持ち悪い(笑)。そっかあ、投与されてたんや、俺。
コニシ:何かの知識を出すたびに、「これは何々で聞いた話なんだけど」とか付け足してんのも、なんかその保険かけてるみたいで気持ち悪かったりしますしね。
九月:だからそう、だから言っちゃって本当はいいはずだからね。果敢に、堂々と。
コニシ:まあ自分はこれを信じているっていうものとして出しても、別に嘘でもなんでもないし。
九月:あ、でもうちのかあちゃんは、「堂々と喋るの良くない」って言ってた(笑)。堂々とない話をするようになりました。自分勝手に喋るの良くない。
コニシ:それは毒親と見せかけて、後の薬になってるから。ワクチンかあちゃん。
九月:モデルナ・マダム。モデルナ・マダムはいっぱいいるだろうな。2020年前後。全国にいっぱいただろう、みんな打ったんだから(笑)。そうだな。そう考えたら、この今回のね「メニスカス」という言葉も、誰かにとっては背伸びする一歩目かもしれないし、誰かにとっては当たり前の言葉かもしれないし。まあでも、そうだよな、そもそも言葉って。本当に日常会話で使う言葉って多分1万語とかじゃん、どうせ。そこはみ出した言葉って、やっぱ自分の世界を広げるとかさ、自分はこの属性の人間だってのを作るためにあるものだから。やっぱそういう意味で言うと、こういう言葉に触れるっていうこの企画、いい企画ですよ。
コニシ:背伸びしろが広がるというか。
九月:言えるから、俺、メニスカスって。言うかどうかまだ分かんないけど。よかったよ。
コニシ:これでまあこの先どこかでメニスカスって出てきた時、気持ちいいでしょう。伏線回収というか。
九月:「伏線回収」もさ、知った風に言うための言葉だよな(笑)。小説、映画、お笑い、漫画何でも、言えばそれっぽくなるから。
コニシ:小中学生の時、伊坂幸太郎読んで「これが伏線回収か!」ってなりましたね。
九月:そうですよ、伊坂幸太郎は伏線回収の一歩目ですから。みんなに教える、最初に。
コニシ:伏線回収でぶん投げるみたいな小説っすもんね、あの人はね。
九月:あの、で、道尾秀介が「叙述トリック」でぶん投げるんすよ、あの辺。
コニシ:「虫だったの!?」みたいな(笑)。
九月:『向日葵〜』ね。嘘つけっていう。
コニシ:気持ち悪い! 読み返せば読み返すほど気持ち悪い小説。
九月:めちゃくちゃ面白い、あれ。
コニシ:最後、イカれ同士のデスゲームみたい。
九月:そうそうそう。あれなんか、燃え上がるお家を背に歩いて行くんですよね、最後。かっこよすぎやろ。なんかうまくまとめましたみたいにやりやがってっていう(笑)。イカれポンチしか出てこない。そうだよな。いいじゃないですか、そういう風に一歩目をね、広げてくれるようなものに人は出会っていくんだね。ああいうのに痺れて、「これか!」ってなっていくっていうのを繰り返して。そして背伸びをし続けていく。それしか人の世界は広がっていかないということですね。
コニシ:じゃあ今後も背伸びする糧として、メニスカスを刻んでいきましょう。皆さんもメニスカスを実際使った、聞いたタイミングあったら教えてください。というわけで今回はこんな感じでメニスカスの回でした。お疲れ様でした。
九月:お疲れ様でした。
九月
コニシムツキ





