
この企画は、芸人の九月と、彫刻家/文筆家のコニシムツキによるラジオ番組です。
辞書を引いて出てきた単語をこねくり回して面白がる。ただそれだけの時間を過ごします。
SpotifyのPodcastでも、ブログ記事としても好きな形で。
広義苑 第0回「毒血(どくち)」
九月: それでは、「広義苑」の時間ですということで。
小西: はい、よろしくお願いします。
九月: よろしくお願いします。えー、この企画はですね、はい、この広辞苑ですね。この広辞苑(岩波書店 第七版)、何ページあるんだこれ……3000以上優にあるね。えー、国語辞典から適当に単語を見つけて、その意味をちょっと掘り下げていこうという企画でございます。ま、辞書って、広くも深くも、それこそ「広義」に、色々と拡張していこうと。
小西: なるほど。
九月: だって、せいぜい3行とかしか書いてない項目多いじゃないですか。それをこう、どれだけ広げられるかというのをやっていこうという風に思います。
小西: はい。
九月: よろしくお願いします。
小西: よろしくお願いします。
一応、自己紹介をやっておきましょうか。
九月: えー、僕がですね、お笑い芸人しております九月と申します。よろしくお願いします。
小西: はい。えー、で、私、小西睦月と申します。はい、去年ぐらいまでちょっとね、えー「yuge」というオルタナティブ・スペースをやっておりまして、ま、ギャラリースペースのようなアートスペースのところなんですけど。そこで6年ぐらい前ですかね、九月さんも、しょっちゅううちで、あのーネタ公演をしてくださっていて。
九月: そうなのよ。
小西: まぁ、その時の、京都活動時代の、こう、友という感じですね。
九月: そうですそうです。めちゃくちゃ旧友。
小西: そうですね。で、また京都で公演とかをね、こう回ったりとかすることも多くなってきたので、まぁちょっとそのタイミングで。
九月: はい。
小西: 遊ぼうと。
九月: ありがたい。いやもう上京してから京都とのゆかり減ってるから、こういうのを作っていかないと。いや、ありがとうございます。ということで今日のロケ地は「恬淡寮(てんたんりょう)」さんという、京都の、えー上京区にございます、めちゃくちゃ町家という。
小西: そうですね、本当に。いいお庭が。
九月: そうですそうです。ここでちょっと言葉を広げていこうということで、ちょっとじゃあ小西さん、辞書の方、よろしくお願いします。
小西: では、あの指をバーっとこう、なぞっているんで、ストップ言ってもらって。
九月: あ、了解です。……じゃあ、ストップ。
小西: はい、では、このページで。ちょっと後半だな……。はい、2089ページ。
九月: そんなに言葉ないだろ、そもそもこの世に(笑)。はい。
小西: 「毒血(どくち)」。
九月: 「毒血」? 何それ、全然知らんかも、俺。「毒血」。
小西: えー、「毒の血」ですね。
九月: あー、「毒の血」ね。
小西: 「病毒を含んだ血。悪血(あくち)。」
九月: あー、悪血(あくち)とも言う。あー。第1回でこれ、いいの?(笑)「毒血」か。なんか『鬼滅の刃』っぽくない?
小西: まぁ確かに。鬼舞辻無惨とか、まんま「毒血」出してなかったっけ。
九月: あれ一番流行った毒血でしょ、最近。大流行の。なんかこの、存在とかニュアンスとしてはフィクションで慣れ親しんでるけど、「毒血」っていう言い回しで聞くの、初めてじゃない?
小西: 初めて、めちゃくちゃ聞いたことない。
九月: うん。で、あと、あれね。なんか昔の人がさ、血に病気があると思ってたんだね。その感じもしない?
小西: 確かに確かに。結局さ、今、その西洋医学的なあれだとさ、ま、血の病気もあるけど、内臓が、とか、ここの骨が、みたいに……。
九月: ウイルス性のものとかね、色々ありますもんね。
割と細かく特定されてる中で、ざっくりと「血が悪い」っていう、なんかその、昔の人やな、っていう。
小西: 確かに。血液主義みたいな。
九月: いや、そうですね。そういう感じもするな。なんかこう昔ありましたよね、こうペストとかも感染こう経路を勘違いして、それこそマスクとかしてたけど意味がなくて、みたいな話もありますもんね。
九月: はいはい、だから、そもそも医学の知識がない中で、全部「血だ」と。
小西: 血のせいだと。
九月: で、しかも「毒だ」と。毒も広いよな。
小西: 確かに。
九月: 毒も広いよなあ。なんか、でもさ、あれよね、本来さ、毒が外部にあって、それに侵されるっていうさ、のが、ま、いわゆる病気という、あれやけども、血自体に毒があるっていう風に、一体化させてたんですね。
小西: うーん。「毒血、病毒を含んだ血。悪血。」……このダメ押しみたいにこう、付け足されてる二つ目の単語の「悪血(あくち)」っていうのも、それも聞いたことない言葉。
九月: 「悪い血」。でもなんか嫌な響きすぎよな。なんか、一族の恥さらしみたいな、なんかそういうニュアンスもするよな。血族みたいなさ。
小西: 確かに。血を汚すというか。
九月: そうそう、スリザリンの発想。「穢れた血」。ハーマイオニーが怒るやつ。
小西: 確かに。「悪血(あくち)」はなんかそういう意味も持っててもおかしくなさそう。
九月: 調べてみようよ、じゃあ。「悪血」。
俺たちの仮説だと、「悪血」には血縁におけるね、恥さらし的な意味もありそうっていう。
小西: 「毒血」はなんか病気って感じだけど。どうなんでしょう、「悪血」は。えー、あ、あ……。
九月: 聞いたことないからな、そもそも。言葉として。
血に言及しないじゃん、普段。血液内科とかじゃない限り。
小西: あ、「悪血(あくち)」。
九月: 「悪血」どうですか。
小西: 「病毒を含んだ血液。悪血(わるち)。」
九月: あはは、一個増えたな! 「悪血(わるち)」もある。毒血、悪血(あくち)、悪血(わるち)っていう、同じ意味の言葉が三つもあるんだ。
小西: いやー、嫌な言葉。
九月: で、なんか俺不思議なのがさ、普通さ、そのなんていうの、異音同義語みたいになってたらさ、一個は生き残るじゃない。どれも聞かないって凄くない?(笑)
小西: 確かに。どれかは残るじゃない。「あ、これね」ってこう、分かるところが。
九月: そう、今でいうこれが、ないんやな。毒血、悪血(わるち)、悪血(あくち)、全部聞きなじみがない。
小西: そうね。全部我々の世代に降りてきてないからな。でもその三つの呼び方ができるぐらい、やっぱ存在としてはポピュラーだったって可能性ありますよね。
九月: で、かつ、その訓読みだから、日本にあったっぽいよね。
小西: あー、確かに。
九月: 「ドクケツ」とかじゃないから。
小西: そうですね。
九月: 日本の言葉なんだろうな。なんかその、でもそう思うとなおさら、その一族とか血族的なニュアンスをはらんでてもおかしくない、昔の人の家族感とか、一族感、世界観みたいなのが垣間見える語ではあるのかな。あー、なんか結構面白いな。
小西: 逆に「毒血」の第一印象で言ったら、それこそその鬼舞辻無惨とか。その何だろう、あのゾンビもの。
九月: あー、そうね。吸血鬼もの。
小西: 彼岸島(ひがんじま)とかもそうやし。そうですね、ああいうやっぱ血で感染する系のものって、なんかこう結構当たり判定ガバガバなもの多くないですか?(笑)
九月: 多いね。なんか「それでは感染するし、それはしないんだ」みたいな(笑)。
小西: そう、その傷の量とかはもう全然ダメそうだけどな、みたいな。いけたりしてますよね。
九月: 彼岸島のさ、主人公の明、吸血鬼斬りまくって返り血浴びまくってるけど、20年ぐらい感染してない(笑)。そこ全然大丈夫なんやっていう。
小西: もう噛みさえされなければ、みたいな感じですよね、きっとね。
九月: そうなんだろうな。いやもちろん、だから、そうか、だから血のさ、ファンタジーとかホラーとかいっぱいあるけど、そういう、そっちに残ってるね、じゃあ「毒血」「悪血」の概念って。現実ってよりは。
小西: そうですね。血に対する俺たちの恐れとか、そういう感情がフィクションには閉じ込められて、現実からはこう脱臭されたみたいな。
九月: まぁそうですね。
小西: まぁ、元々その医学的には正確じゃなかったものをそう呼んでたかも、みたいなのを思うと、ま、結果それもフィクションっちゃフィクションじゃないですか。
九月: なるほど。
小西: 「毒血」っていう存在自体が、もうずっとフィクションの枠内にあるものなのかもしれない。
九月: はいはい、だからその世界観というか、一つの説明する方法として、昔の人が考えたもの。で、非科学的だからこそフィクションの中では生き残ったみたいな。
小西: そうですね、妖怪のような。
九月: すごい、すごいいい説明。いやもちろんね、あの今現在も血液の病気はいっぱいあるでしょうし、苦しんでおられる方もね、たくさんいらっしゃるでしょうけれども。
小西: まぁいわゆる、そうですね。「毒」ではないですもんね。
九月: 毒とかじゃないから。やっぱそこの忌み嫌われてる感みたいなのも、ちょっと差別的な響きとかね、あるもんね。でもそう考えたらさ、フィクションの毒血側の奴らって、虐げられてるっていうよりも、めちゃくちゃ虐げにくる側だよね。
小西: あー、確かにそうですね。
九月: 「毒血」が強い言葉になってるよね。それはなんかどっかで転換があったんだろうね。
小西: 脅威側として描かれますよね。
九月: そうだよね。だって昔はさ、言われてる奴さ、めちゃくちゃひどい目に遭ってたに決まってるじゃない、どう考えても。悪血、毒血なんて。
小西: 疎外されて。
九月: そうか、だから鬼舞辻無惨になる過程で、どっかでそこの反転が起こったんだ。なるほどなー。なんかやっぱり、こう何なんだろうな、こう、倒す敵側、その感染したらいけないっていう対立になった時に、こっち側が感染したら弱っていくだけだったら、ま、なんかやっぱ物語性がなかなか……。
九月: なるほどね。じゃあ物語性のために狂暴さとかをこう付け足していって……。
小西: はい。
九月: そうだよね、本来の毒血の人ってさ、多分めっちゃ体調悪い。
小西: そう、ただただ弱っていく人たち。
九月: こんな風に言われてる人たちっていうのは。そうだよね、そんな脅威になり得ないというか。そうだよね、だから鬼舞辻無惨とかそうだよね、強いもんな。
小西: まぁDIOとか。
九月: DIOもそうか、血か、あれも。そうかー。いや、そうなってくるか。ゾンビものとかもめちゃめちゃたくさんありますけど、ま、大体襲ってくるし。
小西: 大体その自我をこう保ちながらスーパーパワーを、みたいなやつは出てきますもんね。バイオハザードとかも。
九月: あ、そうやそうや。ちょっと賢い敵とか強いのよな。そのパターンな。
……という風に話していくと、結局「毒血」ってのは何なん、どういうことになるの?
小西: どうなんだろうな。こう、ま、でもフィクションのこう中で育っていったもの。で、かつては医療以前の世界観において、ちょっと呪術的な意味を持っていたっぽいもの。
九月: そうですね。あー。ま、僕らが勝手に喋ってるだけだけど。ちゃんと調べたら全然違うかもしれんし、まだ言ってるかもしれんけど。僕らの見えてる世界の範囲では、そんな気がしてきた。
小西: いや、そうやね。「広義」にしていくっていう営みやからね。
九月: そうそう、ピンポイントで当てるというよりは、広く言葉について考えていこうという話やから。こんな感じ?
小西: こんな感じで、ま、一個目の単語は「毒血」でした。
九月: いやでも結構なんかその、近代の話とか、なんかね、文明の話とかになるもんやね。たった1行、2行だったでしょ。
小西: もう1行というか、もう本当に、5単語ぐらいしかなかったですね。
九月: 「悪い血」とか。
小西: で、「悪血」「悪血(わるち)」とかも飛ばされるだけ飛ばされて。何も書いてないっていう、訓読みが音読みになるだけの、「そりゃそういう言葉もあるやろ」っていう(笑)。
九月: とはいえね、なかなか聞きなじみのない単語について考えられたというのは、有意義だったんじゃないでしょうか。
小西: 俺らが言ってるだけやけど。
九月: 言ってるだけやけども。ま、こんな感じで辞書をね、えー、手元に色々こねくり回して、寄り道をしてっていう感じの回を続けていこうと思いますので。えー、暇な時にね、見ていただけたら、聴いていただけたらと。
小西: そうしましょう。
九月: はい。では、今回は「毒血」でした。
小西: 「毒血」回。物騒な言葉……第1回「毒血」回。
九月: 次、「マカロン」とかがいいな。
小西: 果たしてバランスは取れるのでしょうか。
九月: 広辞苑、怖い単語多そうやけど、その何十万語をさ、選ぶ中でさ、多分その日常で使われなくなった言葉もだいぶ拾われてるじゃん。で、使われなくなった言葉なんてさ、悪い言葉多いに決まってるんだから(笑)。マカロンは残るんだから。
小西: 確かにね。
九月: そうだよね。いやいや、今回は「毒血」だったということで。はい。
小西: また次回、お楽しみにということで。皆さんも好きな単語がおそらくあると思うので、それを「来い!」と思いながら待っていてください。
九月: はい。ありがとうございました。
小西: ありがとうございました。
九月

生年月日 : 1992年9月21日
出身 : 青森県八戸市
経歴 : 八戸高校卒業
京都大学教育学部卒業
同大学院教育学研究科修士課程修了
職業 : 芸人
所属 : フリー
趣味 : 散歩、読書、音楽、美術、野球観戦
特技 : いつでも30分で2000字書ける
好物 : カレー、ラーメン、コーヒー、ドライフルーツ
長所 : 根性、体力
短所 : まぬけである
コニシムツキ

生年月日 : 1997年1月18日
出身 : 愛知県名古屋市
経歴 : 北海道おといねっぷ美術工芸高等学校卒業
京都芸術大学美術工芸学科総合造形コース卒業
職業 : 彫刻家/文筆家/hoge代表/ex.yuge(Dir.)
趣味 : 読書/映画/音楽/ゲーム/美術/ガジェット
特技 : 相槌
好物 : 肉豆腐/揚げ出し豆腐/冷奴
長所 : 面白がり
短所 : 面倒くさがり
九月
コニシムツキ




