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ツーリストシップ5 バンコク編 

2026.04.24

はじめまして、船越晴稀と申します。京都を拠点に活動を行っています。コニシさんに声をかけていただき、今回よりhogeにて連載をさせてもらえることになりました。嬉しい。

声をかけていただいた時に、ちょうどタイでのアーティスト・イン・レジデンスに参加することが決まっていたので、そこでの経験を絡めた旅行記として記事にまとめたいと思いました(ICA京都のICA Kyoto Journalにも記事を書いているので、そちらもぜひご覧ください。)。

アーティスト・イン・レジデンスが、正確には旅行である訳がないのですが、部分的には旅行の性質を持っているのではないかと思っています。例えば、今回、私は観光ビザで日本国籍保有者が滞在できる最大の日数(60日)をレジデンスの滞在制作期間に充てています。つまり、出入国の審査上では「観光客」として扱われています。他にも、Googleフォトは私が滞在中に撮影した写真を勝手に「旅行」とラベリングし、フォルダにまとめてしまいます。なにより、滞在制作中もアーティストは観光客と同じように文化施設や歴史的な場所へと趣くことで固有の風土への理解を深め、深めた分のお腹をフードで満たす必要がありますよね。

そこで、この連載では観光客が持つ「ふまじめさ」や「ふわふわ性」を発揮して、無責任にのらりくらりとした文章を書いていきたいと思います。そもそも、プログラム化されたリサーチトリップではない限り、得られる情報は断片的であり、無責任さに頼らないと書き始めることができません。

観光客は訪問先で生活上の必要をもたない。買わなければならないものも、行かなければならないところもない。観光客にとっては、訪問先のすべての事物が商品であり展示物であり、中立的で無為な、つまり偶然のまなざしの対象となる。──観光客は、遊歩者のようにふわふわと移動する。──この「ふわふわ性」(偶然性)はきわめて重要である。

東浩紀『観光客の哲学 増補版』ゲンロン、2023、pp.62-64.

と、長い前提を終えたところで、今回はめっちゃ俗におすすめのバンコクのアートスペースを紹介したいと思います。


私はタイでの2ヶ月間の滞在中、合計で5日程度バンコクに滞在していました。

バンコクには、BRTやBTSなどの主要な鉄道が走っており、1人であればGrabのバイクで安く柔軟に移動することができるのですが、それぞれのアートスペーにはやや距離があるため、時間には余裕を持って計画を立てたい(あと月・火は閉館しているスペースが多いです。)。

そんな中から、ぜひ訪れたいアートスペースを10軒ほど紹介したいと思います。


BIMA(The Bhirasri Institute of Modern Art)| パブリック

開館日:- 開館時間:-
場所:23/1-2 ซอย สาธร 1 Thung Maha Mek, Sathon, Bangkok 10120

早速、既に閉館している施設なのですが、最初にThe Bhirasri Institute of Modern Artを紹介しておきたいと思います。BIMAは、1974年から1988年まで運営されたタイ初の公立美術館です。
タイ近代美術の父・コッラード・フェローチが1962年に亡くなった後、彼のビジョンを実現しようと決意した美術後援者や芸術家たちの長年の運動を経て、1974年に設立されました。
館名のBhirasriは、コッラード・フェローチのタイ名からきています。また、コッラード・フェローチは、タイの公立大学であるシラパコーン大学の設立にも貢献をしています。既に閉館しているため展示は行われていませんが、建物が美しいので建物だけでも見たいところです。現在のバンコクの文化状況に大きな影響を与えた施設と言えます。


Art Center at Silpakorn University | パブリック

開館日:月 - 土 開館時間:9:00 - 18:00(展示によって変動)

場所:Rajamankha Nai Rd, Tambon Phra Prathom Chedi, Mueang Nakhon Pathom District, Nakhon Pathom 73000 タイ

前述した通り、コッラード・フェローチによって1943年に設立されたシラパコーン大学に附設されているアートセンターです。シラパコーン大学はバンコクとナコーンパトムの2つの県に3つのキャンパスがあるのですが、アートセンターは、バンコクのワン・ター・プラキャンパス内にあります。
展示スペースの他にも、アーティスト・イン・レジデンスや助成金、コレクション、ワークショップ、教育プログラムなど、様々な取り組みを行なっています。展示空間は、かつて宮殿として使用された板歴史的建築物の内部にあります。


BACC(Bangkok Art and Culture Centre) | パブリック

開館日:火 - 日 開館時間:10:00 - 20:00

場所:939 Rama 1 Road, Wangmai Pathumwan, Bangkok 10330

BACCは、2008年にバンコクの中心地のBTSのナショナルスタジアム駅から直結している好立地に設立された9階建ての巨大な文化施設です。好立地なだけに、BACCが設立するまでには17年以上の歳月をかけた利権との交渉の歴史があります。この地道な努力の積み重ねは、ホームページから年表として確認することができます。館内には、メインの展示スペースの他に、カフェや雑貨屋、図書館、貸ギャラリーなどがあります。また、初代館長には、BIMAで最後の館長を務めたチャトウィチャイ・プロマタットウェーティ氏が就任しており、BACCを構想する上で、BIMAから着想を得た部分があるそうです。⑴

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⑴「หอศิลปเพื่อชีวิต หอศิลปเพื่อสาธารณชน คุยกับ ‘ชาตรี ประกิตนนทการ’ ว่าด้วยการพาประวัติศาสตร์แสนท้าทาย กลับเข้าไปในหอศิลป พีระศรี」2024


ジム・トンプソン アート・センター/ The Jim Thompson Art Center | プライベート

開館日:月 - 日 開館時間:10:00 - 18:00

場所:10/1 Kasem San 2 Alley, Wang Mai, Pathum Wan, Bangkok 10330

ジム・トンプソン アート・センターは、2003年にジム・トンプソン財団によって設立されました。2006年よりクリッティヤー・カーウィーウォンが館長を務めており、長年に渡ってタイ国内の主要なアーティストを紹介し続けています。クリッティヤー・カーウィーウォンは、1996年に「プロジェクト304」を共同設立し、97年には「バンコク実験映画フェスティバル(BEFF)」を共同設立するなど、バンコクの美術史を知る上で重要な人物となっています。
また、ジム・トンプソン アート・センターは、ジム・トンプソンの家と隣接する場所に立地し、BACCにも徒歩で行き来できる距離にあるため、一緒の日にいくことをおすすめします。


MIMESIS | プライベート

開館日:木 - 日 開館時間:13:00 - 17:00(事前予約制)

場所:402-408 Maitri Chit Rd, Pom Prap, Pom Prap Sattru Phai, Bangkok 10100

MIMESISは、長らく休業していたabout cafeが2026年1月に再オープンしたギャラリーです。
about cafeは、前述したプロジェクト304と同様に1990年代を支えた重要なオルタナティブスペースの1つです。再オープンのこけら落としでは、タイを代表する彫刻家・Misiem Yipintsoiの展示が行われている。情報が少ないため、今後どのような展開になっていくか気になるギャラリーである。


Bangkok Kunsthalle|インディペンデント

開館日:水 - 日 開館時間:14:00 - 20:00(土日:10:00 - 20:00)

場所:599 Pantachit Alley, Pom Prap, Pom Prap Sattru Phai, Bangkok 10100

Bangkok Kunsthalleは、2024年にチャイナタウンの旧印刷工場を改装して設立されたアートスペースです。3階から6階建ての3棟の建物が繋がり合った建築で、それぞれの空間で展示や搬入が同時に進行しています。今回紹介しているアートスペースの中では、一番若いアーティストが展示をしている印象があります。MIMESISから徒歩で行き来できる距離にあるため、一緒の日にいくことをおすすめします。


STORAGE|インディペンデント

開館日:木 - 日 開館時間:14:00 - 19:00

場所:3rd floor, 469 Phra Sumen Rd, Wat Bowon Niwet, Phra Nakhon, Bangkok 10200

STORAGEは、2022年末に設立されたインディペンデント・スペースです。STORAGEで開催する年間4本の展覧会のうち、1〜2本はパートナー組織からの支援を受けていますが、残りはすべて自己資金によって制作されています。運営上の慣習的なレギュレーションはなく、キャリアや年齢を問わずに、ローカル/グローバルな作家を等しく紹介することに重点を置かれています。


N22|Gallery VER|インディペンデント

開館日:火 - 土 開館時間:12:00 - 18:00

場所:2198/10-11 Naradhiwas Rajanagarindra 22, Chong Nonsi, Yan Nawa, Bangkok 10120

Gallery VERは、2006年にリクリット・ティラヴァーニャらによって共同設立されたアーティスト・イニシアチブです。「N22」と呼ばれるアートコミュニティに属するスペースの1つで、他の「CARTEL Artspace」、「VS Gallery」、「Neu Contemporary」、「Be TAKERNG LAB」などのスペースと隣接しています。


BANGKOK CITYCITY GALLERY|インディペンデント

開館日:水 - 土 開館時間:13:00 - 18:00

場所:13 3 Soi Atthakan Prasit, Thung Maha Mek, Sathon, Bangkok 10120

BANGKOK CITYCITY GALLERYは、2015年に設立されたプロジェクトスペース・コマーシャルギャラリーです。2つのスペースがあり、内1つを書店として運用しています。2017年からは「Bangkok Art Book Fair」の共催や、3年に一度、パフォーマンスと映像作品を展示する「Ghost」というフェスティバルの企画も行なっています。


Dib Bankok| プライベート

開館日:木 - 月 開館時間:10:00 - 19:00

場所:111 Soi Sukhumvit 40, Phra Khanong, Khlong Toei, Bangkok 10110

Dib Bankokは、2025年12月にオープンした現代美術館です。タイの実業家・アートコレクターであったペッチ・オサタヌグラ氏のコレクションが収蔵されている。このコレクションは、特に1960年代以降の作品が多く、特に同館3階では、モンティエン・ブンマーの特別展示が行われている。

初代館長として、日本人キュレーターの手塚美和子氏が就任するなどして日本でも話題になっていました。ただ、チケットが3,500円と少し高めです。

他にも、いくつかアートスペースを訪れたのでURLだけでも記載しておきたいと思います。

バンコク現代美術館

SAC ギャラリー

Speedy Grandma Gallery

CARTEL Artspace

Nova Contemporary

Warin Lab Contemporary

10箇所と潤沢な量ではありませんが、個人的におすすめのアートスペースを時代背景や関係性と共に簡単に紹介してみました。

1980年代のBIMAに始まり、1990年代のプロジェクト304、about cafeを経て、2000年代のBACCやジム・トンプソン アートセンター、Gallery Verなどの試み、そしてここ数年の間にKunsthalleやSTORAGE、Dib Bankokなどが設立された。

年単位で状況が変化していくため、この記事が今後バンコクにいく方のどれだけ役に立つのかわかりませんが、もしバンコクに訪れる際は参考にしてみてください。


【次回予告】5月1日更新予定

ノンポー・タイでのオープンスタジオを終えた僕は滞在期間を2週間残し、暇を持て余していた。
だらだらしてもよかったのだけど、オープンスタジオで出会ったアーティストから連絡があり、
2泊四日でチェンマイのお寺に滞在しながら、僧侶のお手伝いをすることに。
気楽な観光客から、観光客に挨拶される信心深い見習いへと立場が変わっていく。

船越晴稀